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by shree
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大切な人を助けるために

<応急手当講習会>
いざというとき大切な人を助けるために。
緊急時、救助を求めても、すぐに助けがくるとは限らない。

何年も前、私はバンコクで交通事故に遭った。
宿泊ホテルの前からトゥクトゥクといわれる三輪車にのって、
何分もしないときだった。

ひどい渋滞にはまり、私と母が乗ったトゥクトゥクも停滞している。
ふと左の工事現場を見た瞬間、頭のなかで猛烈に思考が展開した。

左の席に座る母越しに、巨大なタイヤが見えたのだ。
座高の低い、小さなトゥクトゥクに乗っている身には、
工事車両と思われる、背の高い大きなトラックの
運転手席までが見えない。
タイヤしか見えないのだ。
それが迫ってくる。

母が先に踏まれてしまう!
私は、トゥクトゥクを降りた直後に、後方車両に轢かれないようと、
とっさに右後方を振り返り確認、
母に叫ぶ、降りて!

しかし、私の声は、発されてはいなかった。
それは頭のなかでの妄想。
すでに、トゥクトゥクに衝撃が走っていた。

トラックの下に引きこまれていく母をスローモーションで視る私。
それも幻視だったのかもしれない。

潰れた車両から母を引き出し、狂ったように走る私。
真夏のバンコク。
熱帯特有のまとわりつくような熱気が私を固め、私をいらだたせる。
公衆電話を見つける。
電話をかけようにもカード専用電話とやらで、コインが使えない。
あたりには小売店のカケラも見当たらず、カードの入手先がわからない。

救いだったのは、事故現場が、
タイで一番偏差値が高いという国立大学にほど近い場所であったこと。
英語が話せるという学生たちが集まってきて、すぐさまカードをくれた。
冷たい飲み物を買ってきてくれた学生もいる。。。

と。
長くなるので、結論を。

病院の集中治療室から、病院専用の携帯を使い、保険会社に救いを求めた。
シンガポール経由でオペレーターにつなぎ、通訳を頼んでいた。
CTスキャンデータを帰国時に持ち帰らなければいけない。
医師とのやりとりは英語だったのに、私にはその語学力がなかった。

動揺する私にオペレーターが言った。

「私たちも精いっぱいやります。
でもそれはサポートなんです、わかりますか。
現場にいるのは、あなたなんです。
あなたが、やるんです」

それは、以降の私の人生において、忘れられないひと言となった。
いざというとき、救急車の到着まで、できることがある。

その後、私は、消防庁の「上級救命講習」を受けた。
このコースでは、AEDを含む救命、ケガの手当、搬送方法が学べる。
受講後には、『上級救命技能認定証』が発行される。
詳細は、以下に。

東京消防庁「応急手当講習会」http://bit.ly/5LTqAr
申し込みは、http://www.teate.jp/teate.htm

最後に頼れるのは、自分だけ。
目の前で大切な人を見つめているだけでは、いられないから。




余談;
いざというときの人間の力はすごいと思う。
ろくに英語もできないのに、あの事故直後、すごく話せた。

警察に状況を説明し、
トラックやトゥクトゥク運転手に対する訴訟拒否を受諾し、
ホテルスタッフに荷物を頼み、
医師や看護婦には、逐一母の状態を伝えつつ、入院手配もこなした。

病室にまで、わざわざ電話をくれたホテルの総支配人に状況を伝える。
それから、現地の旅行エージェントにスケジュール変更をお願いし、
退院後の救急車も用意してもらった。

そして、最後は空港。
当時タイの空港は、麻薬取締の厳戒態勢のまっただなか。
空港に到着後、パスポートコントロールにたどり着くまでだけでも、
身体に3度もチェック済シールを貼られるほど厳しい。
ピリピリしたムードの空港で、
X線拒否!と、CTスキャン等の書類一式が入った分厚い封筒を死守する私。
母の頭部が写った大切な画像。
とはいえ、先方にとっては、怪しい封筒と紙一重。
空港スタッフと、もめにもめた。
10年以上も前の話しなので、いまなら医療用にも対応したX線なのかもね。

そう。
とにかく、あのときだけ英語が異様に話せた気がする。
ヒトの能力ってすごいなあと思う。
by shree | 2011-05-30 06:56